東大宮にある駅前通り動物病院では、日々猫ちゃんの歯周病治療に取り組んでいます。より正しい診断とより効果的な治療を実施するために歯科専用の機材を揃えています。
歯科専用ユニット、歯科用デジタルレントゲン、高性能歯科用ルーペを導入し、すべての歯科処置で使用しています。
今回は、様々な程度の歯周病について、実際の写真やレントゲン写真をみながら猫ちゃんの歯周病治療で実際にしていることをご紹介したいと思います。
猫ちゃんの歯周病はどのように発症するのか?
歯周病治療のながれについて説明する前に、そもそもどのように歯周病が発生するのかをまずは解説したいと思います。

歯周病の始まりはプラーク(歯垢)が形成されることです。口の中の粘膜に存在する細菌が唾液に混入し、歯の表面に付着します。
付着後半日くらい経過すると細菌が急速に増殖し、その細菌によってプラーク(歯垢)が形成されます。

歯面に付着した細菌は、粘着性の物質を産生し、これが次第にフィルム状の膜となり、ネバネバしたバリアのようになります。
このバイオフィルムは猫ちゃんでは24時間以内に形成されると言われています。バイオフィルム内は抗菌薬や消毒薬に対する抵抗性が高く、抗菌薬に対して1,000倍も高いと言われています。
そのため、抗生剤の内服ではなく、全身麻酔下での機械的なバイオフィルムの除去(スケーリング等)が重要です。

歯肉の上で増殖したプラークがやがて歯根よりに進行していきます。そうすると、歯肉や歯周組織(歯槽骨や歯根膜)に炎症が起き、歯周ポケットが形成されていきます。
さらに歯周病が進行すると歯根膜の消失、歯槽骨が溶けていきます。その結果、歯がグラグラしたり、様々な病気を引き起こします。
また、プラークに唾液や炭酸カルシウムなどのミネラルが沈着して石灰化したものが歯石と呼ばれます。猫ちゃんでは、歯垢が石灰化して歯石に変化するまでに1週間かかると言われています。
特に唾液腺が近い第4前臼歯の外側に歯石が沈着しやすいのはそのためです。

歯周病のステージと治療内容について
歯周病のステージに関しては、アメリカ獣医歯科学会が定めており、レントゲン検査で評価します。
ステージ1
ステージ1は歯肉炎のみで、レントゲン検査では異常は認められません。


ステージ1の場合、予防的歯科処置として、歯垢、歯石除去とポリッシング(歯面を磨く)を行うことで歯周組織は元に戻ります。
ステージ2
ステージ2はアタッチメントロスが0ー25%以内で収まっている歯周病です。プロービングをすると歯周ポケットが正常よりも深くなり始めます。


早急に全身麻酔で歯科処置を受けることでこれ以上の歯周組織の喪失を防ぐことが可能なステージです。このレベルであれば、抜歯をすることなく対応が可能です。
ステージ3
ステージ3はアタッチメントロスが25ー50%ある歯周病です。見た目だけでは判断ができず、レントゲンを撮影するとステージ3のことも多々あります。

(異常歯ではあるが)

歯科処置後に自宅での定期的なデンタルケアが困難な猫ちゃんの場合、抜歯を推奨しています。
デンタルケアが可能な場合、歯周組織再生治療を実施すれば失われた歯周組織も一部回復します。
ステージ4
ステージ4はアタッチメントロスが50%以上ある歯周病です。歯を支えている歯周組織はほとんど破壊されており、動揺している場合もあります。


歯周組織の大部分を失っているため、治療により再生することは不可能な状態です。これ以上歯周病が進行すると、周囲の歯への波及、顎骨折などを引き起こすため、抜歯適応になります。
猫ちゃんの歯周病の症状は?
猫ちゃんの歯周病は、軽度なものから重度なものまでありますが、その症状も様々です。
以下がよくみられる症状です。
・口臭がする
・よだれが多い
・歯石が付着している
・口を気にする仕草をする
・顎をカクカクさせる
・ドライフードをこぼすようになる
・ウェットフードを好むようになる
これらの症状がないか日々確認してみて下さい!
猫ちゃんの中には、目立った症状がなくても重度の歯周病の猫ちゃんもいますので、動物病院で定期的に口腔内の検査をして下さいね。
歯周病を放置するとどうなるの?
歯周病を治療せずにそのまま放置しておくと局所のトラブルと全身のトラブルに発展してしまうことがあります。
局所のトラブル
局所のトラブルでは、歯周病の進行に伴い歯の根っこの方まで感染し、顎や顔の病気を引き起こすことが少なくありません。
・根尖周囲病巣
歯の根っこの感染を起こすことで、外歯瘻や内歯瘻を起こす
・口腔鼻腔瘻管
主に犬歯の歯周病が進行することで、口と鼻を隔てている骨が破壊されて口と鼻が交通してしまいます。このような場合、くしゃみ、鼻水、鼻血などの症状がみられます
・外歯瘻、内歯瘻
歯周病から根尖周囲病巣を起こし、さらに顎の骨を経て皮膚に瘻管を形成すると外歯瘻に、口腔粘膜に瘻管を形成すると内歯瘻になります。外歯瘻は目の下の腫れとして認識されることが多いです。
上記のようなトラブルを起こしている場合、基本的にはその原因となる歯の抜歯が適応になります。そうならないように、日頃から歯磨きなどのメンテナンスや動物病院での定期的なデンタルケアが重要になってきます。
全身のトラブル
歯周病自体は、局所の感染症ですが、最近の研究では歯周病は全身性疾患にも影響を与えると言われています。特に医学領域では、歯周病と心臓血管系疾患、糖尿病、肥満、呼吸器疾患など様々な病気との関連性が示唆されています。
犬や猫でも歯周病と全身性疾患の関連性が報告されています。
・犬の歯周ポケット及び末梢血から歯周病原性細菌が分離された
・僧帽弁閉鎖不全症の犬の心臓検体から歯周病原性細菌のDNA増幅が認められた
・コントロール不良の糖尿病が歯周病を治療したところ、コントロール可能になった
・歯科疾患に罹患している猫は腎臓病になるまでの期間が短かった。重度な場合、その期間はさらに短かった
当院での猫ちゃんの歯周病治療の流れ

日常の診察や歯の悩みの診察で、まずは現在の状態を視診で把握します。
この際に、視診でわかる範囲での歯の状態、治療の必要性などを患者さんやご家族の意向など様々な観点から考え、最適な提案をするように心がけています。

手術前の検査では、手術や麻酔が安全にできるかのスクリーニング検査と、意識下での口腔内検査を行います。
意識下での検査では、状態を詳細に把握することは難しいため、最終的な診断には麻酔下での口腔内レントゲン検査が必要になります。
多くの場合、麻酔下での検査と治療を同日に実施します。そのため、予めご家族と治療方針のすり合わせや術中に電話等で相談して処置の内容を決めるようにしています。

全身麻酔後にまずは口腔内の写真撮影をします。その後、口腔内の視診、歯列や歯の本数の確認、歯周ポケットの計測などを行い、記録します。
歯列や歯磨き注意ポイントなどはすべて紙に記録し、ご家族にどんな処置を行ったのかわかるようにお渡ししています。

歯周病は、見た目では軽度に見えてもレントゲンを撮影すると意外に重症なケースがあります。そのため、当院ではすべての症例で歯科用レントゲンを撮影するようにしています。
当院では、歯科専用のデジタルレントゲンを導入しているため、全身麻酔後に10~15分ですべての歯のレントゲン撮影・評価をすることができ、診断、治療に役立てています。

レントゲン撮影後、超音波スケーラーを使用して歯石除去を行います。歯に付着した歯石は鉗子等で無理やり外すと歯の表面に傷がついてしまいます。
そのため、超音波スケーラーで優しくなでるように、歯の表面の歯石を除去していきます。

歯科用レントゲンで抜歯が必要と診断した歯の抜歯を行います。歯を支えている歯根膜を切り、鉗子で抜歯します。歯の根っこが複数あるような歯はドリルで歯を1本の根っこに分割し、抜歯します。
また、過剰な歯肉等により歯周ポケットが深くなっている場合には、歯肉切除を行います。
その他に、歯肉再生療法を実施する場合や、抜歯窩が大きい場合には、歯肉粘膜で穴をふさぐこともあります。

歯のスケーリングをすると歯の表面に細かい傷ができてしまいます。この状態では、歯垢が付着しやすい状況になりますので、歯面を研磨して歯の表面を滑らかにする必要があります。
始めは粗目の研磨剤で磨き、仕上げは細かい研磨剤で磨くことで表面をつるつるに仕上げます。場合によっては、コーティング剤を塗ることもあります。

スケーリングなどの歯科処置はあくまでもリセットする目的です。そのため、処置後に家でデンタルケアを実施して頂くことが重要です。
当院では診察室でデンタルケアの方法を指導するようにしています。1回だけではなかなか伝わらないことも多いので、処置後も定期的に歯の状態のチェックとデンタルケアの方法を指導するようにしています。
駅前通り動物病院では医療機器を完備
血液検査機器
各種血液検査機器を完備しているため、院内で血液検査を実施できます。15分前後で結果がでるため、スムーズに治療に移ることができます。

デジタルレントゲン検査機器
デジタルレントゲンシステムを導入しているため、撮影からデータの描出まで、数分で終わるため、スムーズに治療に移行することができます。

歯科用デジタルレントゲン装置
2022年の秋に新たに歯科用デジタルレントゲンを導入しました。増加する歯周病の治療成績をより向上させるために、また客観的な情報を提供するために役立ちます。

高性能サージカルルーペ
歯周病治療などの際に、徹底的な歯周ポケットの洗浄、歯石除去やより質の高い治療を実現するために2022年10月に導入。

超音波検査機器
超音波検査により、お腹の中の臓器を評価したり、心臓の構造・機能を評価したりすることができます。プローブを当てるだけなので、痛みもなく動物たちのストレスを最小限に検査ができます。

内視鏡装置
猫の場合、内視鏡は全身麻酔をかける必要があります。しかし、お腹を開けることなく、食道、胃の中、十二指腸などを観察することが可能です。また、鼻の中や、喉の奥も観察することが可能です。

歯科用ユニット
3歳以上の猫の70-80%が歯周病と言われています。そのような背景の中、当院では歯周病の治療に力を入れています。より短時間で歯周病治療を実施できるように歯科用ユニットを導入しています。

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