【獣医師が執筆】猫の虫歯?猫の吸収病巣について

東大宮にある駅前通り動物病院では日々猫の口のトラブルの診察を行っています。猫ちゃんの歯が関連する病気は主に3つあり、歯周病・吸収病巣・口内炎です。

猫ちゃんの吸収病巣は、1920年に報告されて以来徐々に発生率が増加しており、今では成猫ちゃんの20~70%程度にみられるとも言われている比較的よくみる病気です。

そこで今回は、猫ちゃんの吸収病巣についての解説と実際の治療についてご紹介します。

目次

猫ちゃんの吸収病巣ってなに?

猫ちゃんの吸収病巣は、以前は「猫の虫歯」と呼ばれていたことがあるくらいヒトの虫歯と臨床的所見、レントゲン所見が似ています。

ヒトの虫歯は、歯の表面で炭水化物の分解により酸を産出する細菌によって引き起こされますが、猫の吸収病巣は、破歯細胞と呼ばれる細胞が歯を貪食することで歯が欠損していきます。

1920年代に報告された病気ですが、2024年現在でもその詳しい原因や治療法はわかっておらず、治療も難しいと言われています。

また、いくつか吸収病巣になりやすい要因も知られています。

・3歳以上の猫に多く発生する

・室内飼育の猫ちゃんで多い

・ドライフードよりもウェットフードを食べている猫で多い

・1つの歯だけでなく、複数の歯に発生する傾向がある

吸収病巣になりやすい歯は?

猫の吸収病巣ですが、教科書的にはすべての歯で起きると言われていますが、なりやすい歯も存在しています。

特に経験的にも、上顎の第3前臼歯、下顎の第3前臼歯、第1後臼歯はよく見かけます。

赤矢印で示した歯は吸収病巣になりやすい

また、吸収病巣は歯と歯茎の境界部である歯頸部から歯の先に向かって吸収が起きることが多いです。

歯周病と同時に認められることもありますが、基本的には異なる病態であり、歯周病がなくても発生します。

吸収病巣の症状は?

猫の吸収病巣は、特有の臨床兆候を出さないことも多く、様々な臨床症状が認められます。

・歯の知覚過敏

・歯磨き時の出血

・ドライフードを嫌がるようになる

・頭や顎の震え(顎をカクカクする)

・口を気にする仕草をする

歯肉炎や歯周病の場合、歯肉が赤みを帯びている、赤く腫れている、歯石が付着しているなど比較的気付きやすいですが、吸収病巣の場合、はっきりとわからない場合もあります。

吸収病巣の診断は?

吸収病巣の診断は意識下もしくは麻酔下での口腔内検査や歯科用レントゲンで行います。猫の歯は比較的小さいため、通常のレントゲンでは評価が困難であり、しっかりとした診断には歯科用のレントゲンが必須です。

当院では歯科用のデジタルレントゲンがあるため、迅速に撮影して評価することが可能です。

様々な吸収病巣を見ていきましょう!!

右下顎の第3前臼歯の吸収病巣(歯肉が赤く腫れている)
歯科用レントゲン
(第3前臼歯は全体的に吸収されている)
右下顎の第3前臼歯の吸収病巣
歯科用レントゲン
(第3前臼歯の左側の歯頸部が吸収されている)
左下顎の第4前臼歯、第1後臼歯の吸収病巣
歯科用レントゲン
(第4前臼歯と第1後臼歯は全体的に吸収されている)
左下顎の第3前臼歯の吸収病巣
(歯肉で覆われている)
歯科用レントゲン
(第3前臼歯の歯冠は吸収されている)

このように吸収病巣といっても、多種多様な見た目、レントゲン所見です。我々でも、麻酔をかけてから吸収病巣を発見することも多々あります。

猫の吸収病巣には歯科用レントゲンの所見により、3つのタイプに分類されます。

・タイプ1
レントゲンでは歯根膜腔や歯根が確認できる

・タイプ2
レントゲンでは歯根や歯根膜腔の形状が保たれていない

・タイプ3
タイプ1とタイプ2の両方の特徴をもつもの

吸収病巣の治療法は?

猫の吸収病巣の治療法は、進行性の病気であり、未だ確立されていません。現在の治療の目的は、吸収病巣による痛みの軽減と不快感を和らげることです。

主な治療法は以下の通りです。

・吸収病巣の歯の抜歯

・歯冠切除(歯の先っぽを切除)

・経過観察

レントゲンで歯根膜腔や歯根が確認できるタイプ1では、歯根ごと抜歯することが推奨されています。

歯根膜がなく、歯根を抜去することが困難なタイプ2では歯冠切除(歯の上の部分)を行います。歯周病を併発している場合には、タイプ2でも抜歯を行います。

実際の治療例をみてみましょう!まずはタイプ1の症例からみていきます。

右下顎の第3前臼歯の吸収病巣
歯科用レントゲン
(第3前臼歯の左側の歯頸部が吸収されている)
タイプ1
第3前臼歯を抜歯
(第4前臼歯も歯周病のため抜歯)
歯科用レントゲン
(歯根膜腔が確認できるタイプ1のため、第3前臼歯を抜歯した)
(第4前臼歯も抜歯している)

 

続いて、歯根膜が確認できないタイプ2です。このタイプは歯冠切除を実施します。

右下顎の第3前臼歯の吸収病巣(歯肉が赤く腫れている)
歯科用レントゲン
(第3前臼歯は全体的に吸収されている)
タイプ2に該当
右下顎の第3前臼歯の歯冠切除
歯科用レントゲン
(歯冠切除を実施)

当院では、上記のように全身麻酔下で口腔内検査及び歯科用レントゲンを撮影し、歯の状態を評価した上で治療に臨むようにしています。

全身状態に問題がない場合を除いて、基本的には日帰り手術になります。

猫の吸収病巣の費用は?

猫の吸収病巣の治療にかかる費用ですが、以下の通りです。

・術前検査代(血液検査、胸部レントゲン、心臓エコーなど)10,000円~

・全身麻酔代(体重、時間、使う薬剤等により変動)10,000円~

・歯冠切除または抜歯費用(スケーリング込、本数等により変動)30,000円~

・術後の内服代

歯周病の程度や、処置の内容により左右しますが、おおよそ70,000~100,000円くらいになります。

駅前通り動物病院では医療機器を完備

血液検査機器

各種血液検査機器を完備しているため、院内で血液検査を実施できます。15分前後で結果がでるため、スムーズに治療に移ることができます。

デジタルレントゲン検査機器

デジタルレントゲンシステムを導入しているため、撮影からデータの描出まで、数分で終わるため、スムーズに治療に移行することができます。

歯科用デジタルレントゲン装置

2022年の秋に新たに歯科用デジタルレントゲンを導入しました。増加する歯周病の治療成績をより向上させるために、また客観的な情報を提供するために役立ちます。

高性能サージカルルーペ

歯周病治療などの際に、徹底的な歯周ポケットの洗浄、歯石除去やより質の高い治療を実現するために2022年10月に導入。

超音波検査機器

超音波検査により、お腹の中の臓器を評価したり、心臓の構造・機能を評価したりすることができます。プローブを当てるだけなので、痛みもなく動物たちのストレスを最小限に検査ができます。

内視鏡装置

猫の場合、内視鏡は全身麻酔をかける必要があります。しかし、お腹を開けることなく、食道、胃の中、十二指腸などを観察することが可能です。また、鼻の中や、喉の奥も観察することが可能です。

歯科用ユニット

3歳以上の猫の70-80%が歯周病と言われています。そのような背景の中、当院では歯周病の治療に力を入れています。より短時間で歯周病治療を実施できるように歯科用ユニットを導入しています。

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この記事を書いた人

東大宮にある駅前通り動物病院の院長。
猫と楽しく生きるための情報を発信しています。

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